腺癌(せんがん)について獣医師が解説

口腔・顔面の病気辞典
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腺癌(せんがん)とは?

腺細胞とは体のさまざまな場所にあり、分泌機能の役割をしている細胞です。

腺細胞が腫瘍化したもので、良性腫瘍を腺腫といい、悪性腫瘍を腺癌(せんがん)といいます。

腺癌は隣接しているリンパ管や血管内へ簡単に侵入し、他の臓器に転移します。

扁平上皮癌などに比べると悪性度は高いといえます。

犬でみられる肺腫瘍は肺腺癌が最も多く、肺腺癌は転移しやすく、最も多いのが胸の中のリンパ節や他の肺への転移です。

犬の鼻腔内に発生する腫瘍の約50%が鼻腔内腺癌で、中高齢の犬で発生が多いです。

この中の多くは鼻腔付近に発生が多く遠隔転移が少なく放射線治療が適応となります。

全犬種で発生しますが、肛門周囲腺腫は未去勢の高齢雄に見られることが多く、去勢手術で予防につながります。

症状

腺癌(せんがん)は鼻、耳、胃腸、肺、乳腺や子宮、前立腺、肛門など様々な場所に発生します。

症状は発生部位によって異なります。

・出血や圧迫
・下痢、血便
・元気消失
・食欲不振および体重減少
・顔面変形
・鼻血やくしゃみ

予後

腫瘍の発生部位によって予後は変わります。

肺腺癌の根治治療を行った場合の生存期間中央値は約2年で、予後は良好です。

一方、悪性度の高い場合では生存期間中央値は約5ヶ月です。

鼻腔内腺癌は無治療の場合約3ヵ月程度の生存であるのに対し、治療を行う事で約6カ月前後の生存が期待できます。

また、抗癌剤での化学治療や外科手術を併用することによって1年以上に生存期間を延ばすことも期待できます。

腸腺癌の場合、積極的な治療を行うと生存期間中央値は約6〜15ヶ月程度ですが、腸の全周にがんが浸潤している場合は、手術が困難な場合も多く、年単位の生存は困難な場合が多いです。

検査・治療法

腺腫・腺癌の明確な原因は不明ですが、検査方法として触診、血液検査、X線、超音波、CT/MRI検査、病理組織検査が挙げられます。

治療方法は外科手術、抗がん剤などの化学療法、放射線治療から選択されます。

治療は、局所の外科手術がもっとも重要となります。

日ごろから全身にしこりやできものがないか全身チェックを行いましょう。早期に発見できれば、重症化を防ぐことができ、治療方法の選択肢が広がります。

予防策は明確ではないため、早期発見・早期治療が重要です。

犬の口腔内にできる悪性腫瘍こちらも参考にしてみてください。

当院の腺癌症例 唾液腺癌 鼻腔内腺癌

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