口腔内腫瘍(犬猫)

口腔・顔面の病気辞典
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腫瘍ができやすい場所の第4位が口の中

当院では歯科、口腔内の診察を専門的に行っているため、「口腔内腫瘍」を診断、治療する事が多くあります。

口腔内腫瘍は稀なものではなく部位別に見ると4番目に多い腫瘍です。

腫瘍が発生しやすい部位の順番は、1.皮膚 2.リンパ系 3.乳腺 4.口腔となります。

犬に多く発生する悪性腫瘍TOP3

口の中にはメラノーマ、扁平上皮癌、線維肉腫が多く発生します。

特に多いのがメラノーマ(悪性黒色腫)で、その次が扁平上皮癌になります。

線維肉腫は発生頻度としては少なく特に20kg以上の中型犬~大型犬で発生します。

メラノーマ 犬
メラノーマ 犬
犬 歯ぐき 扁平上皮癌
扁平上皮癌 犬
線維肉腫 犬
線維肉腫 犬

猫に多く発生する悪性腫瘍

猫においては扁平上皮癌が最も多く発生します。

それ以外の悪性腫瘍はごくわずかです。

つまり、何か口の中にできている場合には悪性腫瘍の可能性が高いです。

ただ、顎が腫れたという事であれば扁平上皮癌だけではなく歯周病によって骨が腫れている事も多いので鑑別には注意が必要になります。

猫 扁平上皮癌
猫 扁平上皮癌 舌
猫 扁平上皮癌 歯茎
猫 扁平上皮癌(歯茎)

症状

口腔内腫瘍の症状は腫瘍のできる位置によって異なりますが、下記のものがよく現れます。

・口臭が強い(生臭い、ドブの様な臭い、魚臭い…)
・よだれが増える
・口から出血する
・ごはんが食べにくそう、お水も飲みにくそう
・ご飯を食べるのに躊躇している、食べるのに時間がかかっている
・体重が減っている

見た目で良性か悪性か判断できる?

腫瘍には「良性」と「悪性」があります。

良性腫瘍は緩やかに大きくなるものの転移などはしない為生命にかかわる事はありません。

しかし、悪性腫瘍は急速に大きくなり機能障害を引き起こしたり転移して、最悪の場合死に至ります。

大事なのはこのできものが良性なのか悪性なのかです💡

経験が豊富な獣医師であればある程度見た目でも判断ができます。

〇メラノーマ

ベタッと張り付くような状態で表面は黒色で見た目が柔らかく脆弱な組織に見えます。

大きくなるにつれて表面に潰瘍を作ります。

ただし、メラノーマの中にも黒くなくピンク~赤色のメラノーマもあるため注意が必要です。

〇扁平上皮癌

最初はピンク色の結節状ですが、大きくなるにつれて盛り上がり肉質のある状態になります。

中には明らかな塊を作らず潰瘍状の病変を形成するものもあるので注意が必要です。(猫ではこのタイプが一般的)

〇線維肉腫

表面はピンク色で硬く充実性の塊で、正常な部分と境界がわからないような腫れが特徴です。

見た目でも分かりにくいものもあるためどの腫瘍も確定診断には病理検査が必要です。

↓形質細胞腫…悪性腫瘍

形質細胞腫 犬 前歯 歯茎

↓エプリス(辺縁性歯原性線維腫)…良性腫瘍

エプリス 犬 奥歯 歯茎

検査

① まず見た目や触った感触で腫瘍の大きさや深部への広がりを確認します。
② リンパ節の腫れが無いかどうか肺のレントゲン検査で転移がないか確認します。
③ 口腔内レントゲンを撮影して骨への浸潤を確認します。
④ 細い針を刺して細胞診を行う。より大きな組織を採取し病理検査に提出します。
⑤ 必要に応じてCT検査で腫瘍の深部への広がりや転移をチェックします
組織生検 犬 腫瘍
組織生検
組織生検 病理検査 犬
組織生検で得られた組織を病理検査に提出

治療法

一部の腫瘍を除いて悪性腫瘍の治療の第一選択は外科切除となります。

周囲の組織や骨に浸潤している場合は、周囲組織や骨を含めた切除も一緒に行います。

腫瘍がかなり増大し進行している場合や既に転移がある場合は手術が不適応になることがあります。

手術が不適応になった場合や手術で完全に取り切れなかった場合などでは、補助療法として化学療法(抗がん剤)や放射線治療を行う場合があります。

※当院での治療症例→メラノーマ 扁平上皮癌 線維肉腫

早期発見が大事!

腫瘍の治療成績を左右する一番大きな要因、それは早期発見です!

どんなに悪い腫瘍でも小さければ完治ができます!!

そのため、日頃からお口の中を観察する習慣をつける事が大切となります。

歯磨きをして毎日お口の健康に気を使っていただけたら良いと思います。

口の中のできものはある程度大きくならないと症状に出にくいため気づいた時にはかなり進行した状態という事はよくあるため注意が必要です。

どんな些細なことでも構いません。

異常を感じたら早めに診察を受ける様にしましょう!

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