犬の死因第1位である“がん”
その中でも口腔内腫瘍は発生部位としては4番目に多い部位であり、犬では全腫瘍の6%を占めます。
口の中のしこりが見つけるだけでなく、口臭が強い、口から出血する、ご飯やお水がうまく飲めない、食欲が低下しているといった症状が認められます。
腫瘍(できもの)は必ず組織検査を行って確定診断を行います。
これによって腫瘍の名前が確定したら、どれくらい大きく切除すればいいのか、リンパ節も切除するのか、抗がん剤や放射線治療もするべきなのかなど治療計画が立てられるようになります。
ここでは臨床でよく認められる3つの腫瘍について解説したいと思います。
TOP1 歯原性線維腫
これはエプリスと言われるもので、歯ぐきにできる良性の腫瘍です。
表面は平滑で半球状に盛り上がり硬そうな見た目をしています。
出血を伴う事はほとんどありません。
悪性腫瘍よりも圧倒的に多いのがこの良性腫瘍になります。
見た目でもある程度は診断が可能ですが、確定診断の為には組織検査を行う必要があります。
治療は外科的な切除になります。
部分的な切除では再発するリスクがあるため、完全に切除する際には抜歯も一緒に行う事があります。
良性腫瘍なので当然命に関わるような事がありませんが、歯の表面に汚れが溜まるため歯周病の進行が認められることがあります。
TOP2 メラノーマ(悪性黒色腫)
犬の口腔内にできる腫瘍で多く認められる悪性腫瘍です。
局所浸潤性が強く、転移の多い腫瘍となります。
表面は多くの症例で黒色で、柔らかく脆いため出血をしやすい事が特徴です。
ダックスフンドやトイプードルなど老齢の小型犬に多く認められます。
早いタイミングで見つけて治療ができれば治る可能性はありますが、発見が遅くなると転移をしている可能性も高くなるため完治が難しくなります。
治療の第一選択は顎の骨を一緒に切除する外科手術、リンパ節の切除となります。
放射線への反応も良好で疼痛緩和が期待できるため、腫瘍が大きすぎて手術が不適応の場合などでは放射線治療を検討していきます。
抗がん剤は外科手術や放射線治療と組み合わせて使用する事で効果を示します。
TOP3 扁平上皮癌
メラノーマに続いて多く発生する犬の口腔内にできる腫瘍です。
局所浸潤が強く、遠隔転移の少ない腫瘍となります。
歯ぐきだけでなく舌や扁桃に認められることも多く、扁桃に発生したものは早期に転移を起こす事が知られています。
カリフラワーのような見た目をしている事が特徴となります。
外科切除が治療の第一選択となります。
メラノーマとは異なり遠隔転移が少ないため、腫瘍から余裕をもって切除する事ができれば完治も望めます。
つまり小さい腫瘍であればあるほど完全に取り切れる可能性が高くなります。
人のロキソニンのような消炎鎮痛剤が扁平上皮癌にある程度の効果が期待できます。
放射線への反応も良好で疼痛緩和が期待できるため、手術が不適応の場合には放射線治療を行う事があります。
抗がん剤の効果はあまり期待できません。
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