犬と猫にできる口の中の腫瘍(基礎知識)

口腔・顔面の病気辞典
Pocket

腫瘍には良性腫瘍と悪性腫瘍がある

腫瘍というのは“できもの”と呼ばれ、最終的に生命の危機に陥る悪性腫瘍と命に影響を及ぼさない良性腫瘍があります。

良性腫瘍は増大スピードが遅く、周囲の組織に浸潤はせず、転移も起こしませんが、悪性腫瘍はその逆で増大スピードが速く、周囲の組織に浸潤し、できた場所とは遠い臓器に転移を起こすため、生命に影響を与える事になります。

悪性腫瘍は発生した場所によって~癌(がん)、~肉腫(にくしゅ)と区別されます。

簡単に言うと、皮膚から一続きで続いている外界に接しているような口の粘膜や舌、唾液腺にできた悪性腫瘍は“癌”と言い、顎の骨や顔の筋肉や血管、神経などにできた悪性腫瘍を“肉腫”と表現します。

平仮名で“がん”と記載した場合には癌と肉腫両方を指します。

診断が大切

・まずは、見て触って腫瘍の評価をした上で細胞診や組織検査を行います。

細胞診とは、できものに注射針を刺してその中に入ってきた細胞を顕微鏡で観察して“大まか”に診断する方法です。

組織検査とは、太い針で腫瘍を刺してその中に入ってきた組織やメスなどで大きく切除した組織を顕微鏡で観察して“確定”診断する方法です。

※犬や猫の場合、おとなしく口を開けたままにしてくれない、頭を振るなど安全に上記の検査をできない為、口の中にできた腫瘍の診断は鎮静剤の投与が必要となります。

手術前には全身検査が必要

以下の理由から、腫瘍が見つかったら血液検査や超音波検査、レントゲン検査などで全身の状況を確認する事が大切です。

・検査や手術をするための全身麻酔を安全に行う(健康状態確認)

・局所での腫瘍の広がりを確認する(手術計画を立てる)

・腫瘍が全身に影響を出していないか確認する(腫瘍随伴症候群の有無)

・他の臓器に転移していると手術をしても寿命が変わらない可能性(転移チェック)

・無事腫瘍の摘出ができても他の病気で命を落としてしまう可能性(他疾患の確認)

治療の基本は外科切除

・検査で万が一“悪性”と診断されても他の臓器に転移していなく、跡形もなく切除ができれば完治となります。

・すでに転移している取り切れなかった等の問題がある場合には抗がん剤による化学療法や放射線治療などの追加治療を行っていきます。

・かなり進行した症例では、顔面の極端な変形が避けられない、切除したら自分からご飯は食べれず胃瘻になる、転移をしているため切除しても寿命が変わらない、腫瘍が大きすぎて取り切れない場合には手術ではなく腫瘍の進行を抑えたり痛みを取り除くような“積極的な緩和治療”を行っていきます。

※口の中にできる腫瘍は単純に切除すればいいという事ではなく、飼い主さまが許容できる見た目を維持し、ご飯が食べやすいという機能を保持した状態で切除することが重要になる為、口腔の形態や機能に詳しい獣医師が執刀する事が重要となります。

タイトルとURLをコピーしました