無麻酔歯石除去のリスク③

無麻酔歯石除去
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①と②を先にお読みください。

無麻酔歯石除去とは?①  無麻酔歯石除去の実際②

無麻酔歯石除去に伴う事故

無麻酔歯石除去によるトラブルも多くあります。

その中でも訴訟に発展するケースは稀でほとんどが飼い主の泣き寝入りになっているのが現状です。

実際に起こっている代表的な問題を以下に挙げます。

身体的な負担

・定期的に歯石を取っていたのに急に歯がグラついてきた、顔が腫れた

(表面だけの歯石を取っているので歯周ポケットが深くなっている事に気づかず、歯周病が重度になってやっと気づくケースが多い)

・顎が折れた

(歯周病が進行して弱くなっていた顎の骨が歯石を取る際に負担がかかって折れた)

・処置中に亡くなってしまった

(施術者のペースで処置を続けたことにより血圧など循環系の異常が起こった可能性)

精神的な負担

・処置後から口を触る事を嫌がるようになった

(処置の間ずっとストレスを抱えながら施術を受けるとトラウマになる)

飼い主と離れて処置をされた愛犬がどんな気持ちでその処置を受けたのかを考えてみてください。

コミュニケーションもろくに取らないまま仰向けにしてデリケートなお口の中を金属の機械でガリガリ歯石を取り除く作業が気持ちいいはずがないですよね。

不安と緊張から大人しく我慢している子もいるのが事実です。

何のための歯石除去か

それは歯周病予防や治療をするために他なりません。

歯石を取るのが目的ではなく、本来の目的は歯周病予防や治療となります。

見た目で綺麗になったことが強調されているため目的が忘れがちになっているのだと思います。

目に見えている歯石ではなく目に見えないポケットの中の歯石や歯垢を除去する事が大切です。

人間ではちゃんと病気として考えて向き合っているため、歯医者さんに行くのが当たり前なのと同様です。

犬も獣医さんに行くのが当然だと思います。

美容院や、ショッピングセンターなどのイベントで歯科医師ではないに人に歯石を取ってもらう方はいないと思います。

なぜ、動物だとサロンや野外イベントなどの歯石除去が安全だと思ってしまうのでしょうか。

歯石を除去する本来の目的を今一度考え病気についてしっかり向き合っていただければ、やはり動物病院で診察や治療を受ける必要がある事をご理解いただけると思います。

全身麻酔について

動物病院での治療で心配なのは全身麻酔だと思います。

しかし、多くの子が6カ月齢前後で全身麻酔をかけ避妊・去勢手術(開腹手術)を受けていると思います。

その時はそれほど心配していなかったのに歯周病治療で麻酔をかける事が心配になるのでしょうか?

麻酔のリスクを記した海外の論文によると手術前の検査で明らかな異常が認められなかった犬の0.05%(2000頭に1頭)、猫の0.1%に(1000頭に1頭)死亡するリスクがあるされています。

この様に100%安全な全身麻酔はありません。

しかし、歯周病が重症化して日常生活さえ難しくなってしまった子

肺炎で亡くなってしまった子

などを見てきているため、

この数字が示すリスクは病気を確実に治療する事を考えると低いと考えます。

さらに、当院では基本的に全身麻酔が安全である為、飼い主さまが治療に立ち会う事ができます。

無麻酔歯石除去では飼い主さまが見学できない。(おそらく処置中の動画も見せてもらえない)

不確実な処置で死亡しているケースなども報告されています。

どちらが安全でしょうか?

まとめ

歯石除去はあくまでも手段であって目的を忘れてはいけません。

さらに、その歯石除去が不十分な物であることを飼い主さまは理解する必要があります。

ポケット内の歯垢や歯石が取り残されたままになる事で気づいたときには歯の根っこの奥の方まで細菌が入り込み、気づいたころには顔が腫れたり歯が抜けてしまう事まであります。

同じように無麻酔の歯石除去を危惧して注意喚起しているもの、歯石除去についての基本的な考え方など参考になる記事があります。

下に貼ったリンクをご確認いただけたら幸いです。

参考リンク

〇歯周病治療のためのポケット内の歯石除去方法(人でもポケットの中の歯石は麻酔をかける)

歯石の取り方-深い歯周ポケットにある歯石を取る-|よくあるご質問・「歯」に関するお役立ち情報|大阪茨木市西尾歯科 インプラント/予防医療(PMTC) (nishioshika.com)

〇歯石を取る意味(人と犬も一緒、歯石を取る意味を考える)

歯科医師が教える驚愕の真実。歯科衛生士は歯石をとっちゃダメ!? | Ken’s Note (kensnote.net)

〇日本歯科小動物研究会が考える無麻酔歯石除去のリスク

無麻酔で歯石をとる?! (sadsj.jp)

〇アメリカ獣医歯科学会(AVDC)による無麻酔歯石除去の注意喚起

麻酔無料ペット歯科クリーニング&ペット歯科健康情報 (avdc.org)

〇歯科医師による無麻酔歯石除去の問題点

無麻酔下での歯石除去の問題点 (sadsj.jp)

次の④の記事では無麻酔歯石除去をし、その後当院で歯科処置をしたワンちゃんたちの症例をご紹介します。

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