猫 骨中心性扁平上皮癌(上顎)

口腔内腫瘍
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猫 ミックス 14歳1か月 去勢雄

主訴

半年前から食事量が減り、体重も減少してしまいかかりつけの病院を受診。
抗生剤と消炎剤を処方され、食欲不振が改善したので経過観察。

確定した診断はなく、今後に不安を感じて当院を受診されました。

猫 骨中心性扁平上皮癌
猫 骨中心性扁平上皮癌

口を開けてみると明らかに左の上顎に腫瘍が盛り上がって見えます。

見た目でも左目が細くなりちゃんと目が開かない状況で、口の中に出ている腫瘍が目の方まで浸潤している事が疑われます。

検査

主に以下の2つの検査を行いました。

組織検査(腫瘍の確定診断を行いどのような治療が可能か判断する為)→扁平上皮癌

CT検査(腫瘍がどこまで浸潤しているか手術の適応を判断する為)→下記の所見

CT検査 扁平上皮癌
・病変の大きさ 約3.8×2.5×2.9cm
・左上犬歯尾側以後に存在し、骨融解や骨増生を認め、骨由来の腫瘍性病変を疑う。
・病変により左眼球は背側に圧排され変位する。病変は一部鼻腔への伸展が認められる。

上記の結果より、扁平上皮癌の中でも顎に浸潤する骨中心性扁平上皮癌と診断しました。

このタイプの腫瘍は、局所浸潤は強いもののリンパ節などに転移する可能性が低い事から外科手術で完全に取り切れば予後が良好である事がわかっています。

見た目の変化は避けられないが命には代えられないという飼い主の最終判断で左眼の摘出も含めた手術を行いました。

治療
手術内容
・皮膚は鼻の脇から腫瘍で腫れた部分周囲約5mm程度余裕をもって切除
・腫瘍は眼球に接していたため一緒に摘出
・口蓋は一番深い所で正中まで切除
・CT検査で腫れの認められた左下顎リンパ節も一緒に切除
・経食道カテーテル設置
猫 扁平上皮癌 手術画像

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扁平上皮癌
扁平上皮癌 病理結果

病理検査結果より、完全切除できており、予後は期待できる結果となりました。

経過

手術後は自ら採食が困難と思われたため経食道カテーテルを設置しています。

術創の離開もなく経過は良好で、時間の経過とともにお水を自ら飲み、ドライフードも少量ですがある程度食べる事ができるくらい回復しました。

しかし、術後2か月半後には食道カテーテルが外れた事で体重の減少が見られたため胃瘻を設置しました。

ご飯は自分からも食べますが量は少ないため胃瘻チューブから与えてもらています。

お水は5~10分くらいかけて自分で飲んでいるためチューブからお水を与える事はありません。

手術から9か月経過している現在、再発転移はなく経過は良好です。

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