歯周外科治療 Part3 フラップ手術 

症例紹介・犬
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歯肉剥離掻把術とは?

今回のテーマは引き続き、歯周外科治療についてお話をしたいと思います。

主な歯周外科治療方法の中で、今回は

1.歯肉切除
2.歯肉剥離掻把術(FOP;Flap operation)
3.歯肉弁根尖側移動術(APF;Apically Positioned Flap)
4.骨外科(骨整形、骨切除)
5.歯周組織再生療法

2のフラップ手術をご紹介をさせていただきます。

歯肉剥離掻把術と難しく書いてありますが、簡単に言うと「歯周病で歯周ポケットが深くなってしまった歯の歯肉をはがして、ポケット内の汚れを確実に除去した後、縫い閉じる」処置の事を言います。

歯周病治療の目的はポケット内の歯垢・歯石を確実に除去し、炎症を取り除くことになります。

しかし、歯周病が進行し4mm以上の深いポケットが形成されると、ポケットの奥の歯石を取り残すリスクが高くなります。

人の歯科治療においても歯肉をはがして直接、歯の根っこに付着している歯石を除去する必要があるとされています。

この様な確実な処置ができない場合、せっかく処置したのに口臭が無くならない、歯肉の炎症が治まらないなどの症状が残ってしまったりと、短期さらには長期的に管理が難しい状況になってしまいます。

症例:9歳 トイプードル ドックトレーナーさん紹介

治療前
フラップ手術  犬

歯石の溜まっている部分と歯石の溜まり方が少ない部分の差があります。

ただ、見た目だけでは診断できないためレントゲンを撮影し、診断後、治療します。

その中でも左上顎犬歯の歯周病が中程度に進行していましたが、残す治療をしました。

レントゲンがこちらです。(2枚目はポケットの深さを示してます)

フラップ手術  犬 レントゲン
フラップ手術  犬 レントゲン

②ポケット深度の測定

フラップ手術  犬 レントゲン

ポケットが最大で5mmあり、レントゲンでも歯槽骨の破壊が確認されました。

4mm以上のポケットは歯肉を切開して歯根を露出し、細菌や歯石、肉芽というものを直接目で確認しながら除去することで確実な処置が可能となります。

それがこちらの写真になります。

③歯肉切開

フラップ手術  犬 治療

④ポケット内の歯垢、歯石、肉芽の除去

フラップ手術  犬 治療

⑤歯槽骨が破壊されてできた深いポケット内が綺麗になっています。

フラップ手術  犬 治療 縫合

⑥閉鎖縫合後(ポケットが深くなるような過剰な歯肉は切除)

フラップ手術  犬 治療
治療後

ポケットの深さも術後2週間後には下記の様に明らかな改善が認められました。

【5.3.2.4.5.4】→【2.2.1.1.2.1】 (6点法、単位mm)

※正常なポケット深度1mm

この様に、ポケットが深い歯周病が中程度に進行してしまった歯を残すためのフラップ外科というものは、確実な治療ができるため、予後の予測がしやすくなり、歯の寿命を延ばすことが可能となります。

実際に、⑤の写真の様にポケットが深いという事は①の写真ではわかりません。

つまり、見た目では歯周病の程度を評価することはできないのです。

そして、レントゲンでポケットの深さを確認した上で、歯周外科治療を選択しました。

ポケットが2mmと浅くなれば歯ブラシの毛先でポケットを意識して歯磨きをすることで、長い間きれいな状況を維持する事が可能となります。

フラップ外科は歯周外科治療の基本的な手技となります。

このブログを書いて伝えたいことは、下記になります。

・歯周病治療は抜歯だけではないという事
・歯周病の歯を残すための治療があるという事
・ちゃんとした検査と治療がその歯の予後を変えるという事
・歯を1本1本治療する事はこれだけ作業手順があり、細かい作業だという事

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