「犬のワクチン、混合って何種類もあるけど何が違うの?」「8種と5種、どちらを選べばいい?」「値段はどのくらいかかる?」——種数が多ければ安心とも限らず、お住まいの環境や生活スタイルによって必要なワクチンは異なります。この記事では、コアワクチン・ノンコアワクチンの考え方を軸に、8種と5種の具体的な違い、当院の料金目安、そして「毎年打つべきか」の判断に使える抗体価検査まで、わかりやすくご説明します。
コアワクチンとノンコアワクチンの違いを知ることが選び方の第一歩です
混合ワクチンの種類を理解するには、まず2つの分類を押さえておくと整理しやすくなります。
コアワクチン(すべての犬に推奨)
WSAVA(世界小動物獣医師会)の2024年版ワクチンガイドラインでは、犬ジステンパーウイルス、犬パルボウイルス2型、犬アデノウイルス1型による感染症を予防するワクチンを、世界中のすべての犬に推奨するコアワクチンと定義しています。なお、犬アデノウイルス1型による伝染性肝炎の予防には、交差免疫を利用した犬アデノウイルス2型ワクチンが使用されます。また、狂犬病やレプトスピラ症のワクチンも、地域の感染状況に応じてコアワクチンに分類されます。
- 犬ジステンパーウイルス:呼吸器・消化器・神経症状を引き起こす致死率の高い感染症
- 犬パルボウイルス2型:激しい嘔吐・血便・白血球減少を伴い、子犬の死亡率が特に高い感染症
- 犬アデノウイルス1型:伝染性肝炎の原因となるウイルス(ワクチンは交差免疫を利用した2型を使用)
これら3種は感染力が強く、発症すると重篤になりやすいため、室内飼いの犬でも接種が強く推奨されます。
ノンコアワクチン(生活環境に応じて選ぶ)
一方、ノンコアワクチンは「すべての犬に必須ではないが、特定の環境・リスクがある犬には推奨」されるワクチンです。代表的なものに以下があります。
- 犬パラインフルエンザウイルス:ケンネルコフ(犬の風邪)の原因のひとつ。複数の犬が集まる環境では感染リスクが上がります
- レプトスピラ(複数の血清型):細菌性の感染症で、のちほど詳しくご説明します
- 犬コロナウイルス:下痢・嘔吐の原因となるウイルス(新型コロナウイルスとは別種です)
「5種」と「8種」の違いは、レプトスピラとコロナが入るかどうかです

国内で流通している犬の混合ワクチンの内訳を整理します。
- 5種混合:ジステンパー + アデノウイルス(1型・2型)+ パラインフルエンザ + パルボウイルス
- 8種混合:5種の成分 + コロナウイルス + レプトスピラ(カニコーラ型・イクテロヘモラジー型の2血清型)
5種はコアワクチン成分にパラインフルエンザを加えた構成です。8種はさらに犬コロナウイルスとレプトスピラ2血清型が加わります。
⚠️ 注意点として、「5種」「8種」という種数表示は製剤によって含まれる病原体が異なることがあります。「5種だから同じ内容」とは限らないため、ご不明な点は担当獣医師にご確認ください。
レプトスピラワクチンは「人獣共通感染症」の予防という大切な意味もあります
レプトスピラはネズミなどの野生動物が保菌しており、河川・水田・湿地など水辺の環境に生息します。感染した犬の尿から人にも感染する可能性があるため、公衆衛生上の観点からも重要な感染症です。
以下のいずれかに当てはまる場合は、レプトスピラを含む製剤(8種)の接種を特に考慮されることをお勧めします。
- 河川・公園・田んぼ周辺を散歩コースにしている
- アウトドア(キャンプ・ハイキング)に連れていく機会がある
- ドッグランや多頭飼育施設を利用する
- 野生動物(ネズミ・タヌキ等)と接触する可能性がある
反対に、完全室内飼いで外出をほとんどしない小型犬の場合は、コアワクチン成分を中心とした5種製剤で対応できる場合もあります。どちらが適切かは生活環境をもとに担当獣医師と相談してお決めください。
当院の混合ワクチン料金の目安
当院での混合ワクチンの料金は以下の通りです(税込)。
- 5種混合ワクチン:6,710円
- 8種混合ワクチン:9,680円
ペット保険によっては予防接種が補償対象外となるケースもありますので、加入中の保険の約款をご確認ください。費用について詳しくはお気軽にお問い合わせください。
子犬の初回接種スケジュールは最終回を16週齢以降に終えることが重要です
子犬は母乳から受け取った移行抗体(母犬からの免疫)が体内に残っている間は、ワクチンを接種しても十分な免疫が成立しにくい時期があります。移行抗体が消えるタイミングは個体差があるため、複数回に分けて接種する必要があります。
一般的な子犬の接種スケジュールの例:
- 生後6〜8週齢ごろ:1回目
- 2〜4週後:2回目
- 16週齢(4か月齢)以降:最終回
ペットショップやブリーダーで1回接種済みの場合でも、最終回が16週齢以降に完了しているかを必ず確認してください。16週齢前に接種を終えてしまうと、移行抗体の影響でコアワクチンの免疫が十分に成立していない可能性があります。ご不明な場合は接種記録(ワクチン証明書)をお持ちの上でご相談ください。
毎年接種すべきか迷ったら抗体価検査という選択肢があります
「毎年打つ必要があるの?」というご質問もよくいただきます。WSAVAのガイドラインでは、コアワクチン3種(ジステンパー・パルボ・アデノ)については、成犬において3年以上の間隔での接種を推奨しています。一方、レプトスピラなどのノンコアワクチンは1年ごとの接種が一般的とされています。
コアワクチンの追加接種が本当に必要かどうかを確認するために活用できるのが抗体価検査です。採血によって体内の抗体レベルを測定し、免疫が十分に残っているかどうかを判断する材料にすることができます。
抗体価検査を使うときに知っておきたいこと
抗体価検査には以下のような実務上の注意点があります。
- 費用との兼ね合い:検査費用はワクチン接種費用と同程度か、場合によっては高くなることがあります。コスト面も踏まえて担当獣医師とご相談ください
- ローレスポンダー問題:一部の犬は十分にワクチンを接種しても抗体価が上がりにくい体質(ローレスポンダー)のことがあります。検査結果だけで判断を完結させるのではなく、獣医師の総合的な判断が重要です
- 施設利用の証明書として使えない場合がある:ペットホテル・トリミングサロン・ドッグランなどの施設では「1年以内のワクチン接種証明書」を提出ルールとしていることが多く、抗体価検査の結果証明書では代用できない施設があります。抗体価検査を活用する場合は、定期的に利用する施設のルールを事前に確認しておくことをお勧めします
コアワクチンについては抗体価検査での確認が有効な選択肢になる一方、ノンコアワクチン(レプトスピラ等)は抗体価だけで免疫を評価するのが難しい面もあります。お使いの施設のルールと愛犬の体質を合わせて、担当獣医師とご相談いただくのがよいでしょう。
副反応が心配な場合は接種前後のチェックが安心につながります
混合ワクチンには稀ながら副反応が出ることがあります。国内の報告では、接種後に循環器・呼吸器症状、皮膚症状、消化器症状がみられることがあるとされています。
接種当日に確認すること
- 接種後しばらくは院内または近くで様子を見る:日本の犬の調査では、アナフィラキシー(急性のアレルギー反応)は全例が接種後60分以内に起き、約半数(46.3%)は5分以内でした。すぐに対処できる環境にいることが大切です
- 当日の激しい運動・入浴は控える:体への負担を減らすため、接種当日はゆっくり過ごしましょう
接種後48〜72時間以内に注意すべきサイン
- 顔・まぶた・口周りの腫れ
- じんましん・激しいかゆみ
- 嘔吐・下痢が続く
- 元気がない・ぐったりしている
- 呼吸が速い・苦しそう
これらのサインがあれば、かかりつけの動物病院にすぐにご連絡ください。接種部位が少し腫れる・当日だけ元気がやや落ちるといった軽度の反応は、一般的に数日で落ち着くことが多いです。
過去に副反応があった犬や、アレルギー体質が強い犬については、接種前に担当獣医師にお伝えください。副反応の既往や体質に応じた対応について、獣医師に相談することをお勧めします。
混合ワクチンの種類を選ぶときの考え方まとめ

ここまでの内容を踏まえ、選び方の考え方を整理します。
- どの犬にも:コアワクチン3種(ジステンパー・パルボ・アデノ)は接種が推奨されます
- 水辺の散歩・アウトドア・ドッグランを利用する犬:レプトスピラとコロナウイルスを含む8種が特に推奨されます
- 完全室内飼いでほとんど外出しない犬:5種を基本に、生活環境をもとに担当獣医師と相談しながら選びましょう
- 「種数が多いほど安心」とは限らない:含まれる抗原が増えるほど、稀ながら副反応リスクも考慮が必要です。犬の体質・健康状態も合わせた判断が大切です
- ペットホテルや施設を利用する場合:施設が指定する接種種数・証明書の形式を事前に確認してください
最後に
当院では5種(税込6,710円)・8種(税込9,680円)を取り扱っており、抗体価検査も対応しています。「どちらを選べばいいか迷っている」「副反応が心配」「久しぶりの接種で不安」など、些細なことでもお気軽にご相談ください。
気になることがございましたら、お電話または Web 予約フォームからお問い合わせください。



