「子犬を迎えたら、まず何をすればいい?」「動物病院にはいつ連れて行けばいいの?」「迎えた日に病院へ行くべき?」——初めての子犬との生活が始まり、こんな疑問を持つ飼い主さまはとても多いです。お迎えしたばかりのわが子を前に、嬉しさと同時に不安を感じるのは自然なことです。この記事では、子犬を迎えてから最初の2週間にやるべきことを時系列でご案内します。特に「動物病院デビュー当日に何が起きるか」を丁寧にお伝えしますので、ぜひ参考にしてください。
迎えてから2〜3日は「ゆっくり環境慣らし」が最優先です
お迎え直後の子犬は、新しい環境のストレスで免疫力が下がりやすい状態です。まず2〜3日は静かに過ごし、家の雰囲気や家族の気配に慣れさせることが大切です。
この期間に飼い主さまが確認しておきたいポイントは以下の通りです。
- 食欲・排泄の様子:1日1〜2回以上うんちがあるか、食事をしっかり食べているか
- 鼻水・くしゃみ・咳の有無:お迎え直後はケンネルコフ(犬風邪)が起きやすい時期です
- 元気の程度:ぐったりしていないか、ミルクや水を飲めているか
嘔吐・下痢・食欲不振・ぐったりした様子が見られる場合は、ワクチンの時期を待たず、早めに受診してください。
ケンネルコフ(犬風邪)はお迎え直後に起きやすい病気です
お迎えして数日以内に見られる「くしゃみ・鼻水・軽い咳」の原因としてとくに多いのが、ケンネルコフ(犬伝染性気管気管支炎)です。
複数の犬がいる環境(ペットショップ・ブリーダー・保護施設)から来た子犬は、すでに病原体にさらされていることがあります。症状が軽ければ自然に回復することもありますが、悪化傾向や食欲低下を伴う場合は早めに受診することをおすすめします。
お迎えから1〜2週間後が動物病院デビューの目安です
緊急の症状がなければ、お迎えから1〜2週間後に初診を受けるのが一般的に推奨されています。あまり早すぎると環境変化のストレスが重なりやすく、逆に長く待ちすぎるとワクチンプログラムが遅れることがあります。
ペットショップやブリーダーから迎えた場合は、すでにワクチン接種が行われていることが多いです。その際は接種記録(ワクチン証明書)を必ず持参してください。証明書の内容をもとに、次の接種時期を担当獣医師が判断します。
入手元によって初回受診のポイントが変わります
お迎えした場所によって、初診での確認事項が異なります。以下を参考にしてください。
ペットショップ・ブリーダーから迎えた場合
- ワクチン証明書を持参し、接種済みワクチンの種類・接種日を確認
- 追加接種が必要かどうか(ワクチンの種類・接種間隔)を獣医師に確認
- 健康診断書が発行されている場合はあわせて持参
保護団体・里親から迎えた場合
- ワクチン・駆虫処置の有無を書面で確認してから受診
- 生年月日が不明な場合は、身体の発達状況から月齢を推定します
- マイクロチップの登録状況も確認しておきましょう
受診当日の流れ:診察室で何が起きるかを事前に知っておくと安心です

「動物病院で何をされるか分からなくて不安」という声をよくいただきます。当院での初診の流れを以下にご案内します。
① 問診(約5〜10分)
担当獣医師がお迎えの経緯・食事の内容・便の状態・気になる症状などを確認します。メモしておくと伝えやすいです。
② 身体検査(全身チェック)

聴診・触診・視診で全身を確認します。
- 聴診:心臓の音・肺の音をチェックします。先天性の心疾患(心雑音)を確認する重要な場面です。担当獣医師が聴診器を当てている間は、できるだけ静かにしていただけると助かります
- 触診:お腹の張り・リンパ節の腫れ・股関節の動きなどを確認します。股関節形成不全や臍ヘルニアが見つかることもあります
- 視診:目・耳・口・皮膚の状態、口蓋裂(こうがいれつ)の有無なども確認します
③ 糞便検査

持参したうんちを顕微鏡で調べ、回虫・鉤虫・ジアルジアなどの消化管寄生虫がいないか確認します。子犬では寄生虫感染が珍しくないため、初診時の糞便検査は必須とお考えください。検査当日の便(できれば採取から2時間以内)を小さな容器や袋に入れて持参してください。
④ ワクチン接種・スケジュール確認
身体検査の結果、体調に問題がなければ混合ワクチンを接種します。一般的な接種スケジュールは以下の通りです。
- 1回目は生後6〜8週ごろ
- その後2〜4週ごとに追加接種
- 最後の接種は生後16週齢以降に行う
母犬から受け継いだパルボウイルスに対する移行抗体は、生後24時間を過ぎると吸収されなくなり、成長とともに減っていきます。2〜4週ごとに接種を重ね、最後の接種を生後16週齢以降に行うことで、より安定した免疫が期待できます。
⑤ 今後の予防プランの相談
フィラリア・ノミ・マダニの予防薬、狂犬病予防接種のタイミング、次回の健康診断の目安などを担当獣医師と確認します。
ワクチン副反応の対応と「午前中接種」をすすめる理由
ワクチン接種後まれに、元気がなくなる・食欲が落ちる・顔が腫れるといった副反応が起きることがあります。重篤なものとしてアナフィラキシー反応があり、日本の犬の調査では、その約半数(46.3%)が接種後5分以内に起きたと報告されています。
当院では午前中の接種をおすすめしています。接種後も診療時間内に様子を見ていただきやすく、万一の副反応にも対応しやすいためです。夕方の接種では帰宅後に閉院時間を過ぎてしまうことがあります。
接種当日は、激しい運動やシャンプーは控え、安静にお過ごしください。
社会化期(生後3〜16週齢)にいろいろな刺激に少しずつ慣らしましょう

生後3〜16週齢は社会化期と呼ばれ、子犬が様々な音・人・場所・動物に慣れ、社会性を身につける最も大切な時期です。この時期の体験が、成犬になってからの行動や性格に大きく影響します。
具体的には、掃除機や外の車の音など日常の音、さまざまな年齢・外見の人、散歩コース以外の場所、ほかの犬との穏やかな接触など、少しずつ経験を広げていくことが大切です。無理に慣らそうとせず、子犬のペースに合わせて徐々にステップアップしてください。
ただし、最後のワクチン(生後16週齢以降)が終わるまでは感染リスクのある場所(公園の地面など)に降ろすことは控えるのが一般的です。ワクチン完了前でも、感染リスクの低い環境(清潔な室内・ワクチン接種済みの犬との接触など)で段階的に社会化を進めることが大切とされています。
当院では毎月1回・日曜日にパピーパーティーを開催しています。ドッグトレーナー資格を持つスタッフが立ち会い、同月齢の子犬同士の交流と飼い主さま向けのしつけ相談の場を設けています。社会化期に安全に他の犬と触れ合う機会としてご活用ください。
「動物病院を好きな場所にする」ための体験設計が大切です

初診でネガティブな体験をした子犬は、以後の通院を怖がるようになることがあります。最初の体験の質が、その後の一生の通院しやすさに直結します。
受診前にできること
- キャリーに慣らす:受診の数日前から、キャリーを普段の寝床の近くに置いてにおいを覚えさせる
- 抱っこ・触られることへの慣らし:耳・口周り・足先を優しく触る習慣をつけておく
- 空腹を避ける:ひどい空腹での受診はストレスを高めやすいので、少し食べさせてから連れてきてください。ワクチンを打つ日は、直前の食事は軽めにしましょう。
受診後にできること
- 診察が終わったら、好きなおやつや声かけで「頑張ったね」と伝える
- 帰宅後はゆっくり休ませる
- 次回の受診前にも「病院の近くをお散歩する」「病院でおやつをもらうだけ」など、診察以外で良い記憶をつくる
受診時の持ち物チェックリスト
- 当日の便(採取から2時間以内・小容器や袋に入れて)
- ワクチン証明書・健康診断書(ペットショップ・ブリーダーから発行されたもの)
- 生年月日・お迎え日のメモ
- 現在の食事の種類・量・回数
- 気になる症状のメモ(いつから・どのような症状か)
- マイクロチップ番号の控え(わかる場合)
自宅でできる毎日の健康チェック3つ
動物病院での健康診断と合わせて、家での日常チェックが早期発見につながります。
- 食欲・飲水の確認:急に食べなくなった・水をたくさん飲むようになった変化に気づく
- 便の状態の確認:柔らかすぎる・血が混じる・1日1回以上あるかどうか
- 口の中のチェック:歯肉の色(健康な歯肉はサーモンピンク色)、歯の状態への早期注目が将来の歯周病予防につながります
子犬の頃から口を触られることに慣れておくと、歯磨きへのハードルが大きく下がります。子犬の歯周病と歯磨きについての詳細はこちらの記事もご参考ください。
以下のサインがあれば早めに受診をご検討ください
- 食欲がない・水を飲まない状態が半日以上続く
- 嘔吐または下痢が2回以上続く
- ぐったりしている・呼びかけへの反応が弱い
- くしゃみ・鼻水・咳が悪化傾向にある
- 目やに・涙が多い、目を細めて開けにくそうにしている
- おなかが張って硬い
「様子を見るべきか、受診すべきか迷う」という場合は、お電話でご相談いただくことも可能です。
最後に
子犬を迎えた最初の2週間は、環境慣らし・健康確認・ワクチンプログラムの開始という3つの大切なステップが重なる時期です。当院では初診時に身体検査・糞便検査・ワクチン接種・今後の予防プランの相談まで、一度の受診でトータルにサポートしています。また、月1回のパピーパーティーでは社会化期の子犬の交流としつけのご相談も承っています。
「何を聞けばいいかわからない」という場合でも、担当獣医師やスタッフが丁寧にお答えします。お気軽にご相談ください。
参考文献
- Miyaji K, Suzuki A, Shimakura H ら 2012. Large-scale survey of adverse reactions to canine non-rabies combined vaccines in Japan. Vet Immunol Immunopathol https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/22264736/
- Squires RA ら 2024. 2024 guidelines for the vaccination of dogs and cats (WSAVA Vaccination Guidelines Group). J Small Anim Pract https://wsava.org/wp-content/uploads/2024/05/2024-Guidelines-for-the-Vaccination-of-Dogs-and-Cats.pdf
- Mila H, Grellet A, Desario C ら 2014. Protection against canine parvovirus type 2 infection in puppies by colostrum-derived antibodies. J Nutr Sci https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/26101622/
- Cocco R, Arfuso F, Sechi S ら 2025. The Puppies' Age at Adoption Time Influences the Behavioral Responses of Adult Dog. Vet Sci https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/40005936/


